インタビュー

【先輩インタビュー】世界中の人権問題に向き合いたい。10年越しの夢を叶える三上弁護士にインタビュー

みなさんは弁護士を目指すきっかけや思いを色褪せず、覚えているだろうか。

今回インタビューに協力して頂いたのは、弁護士法人東京パブリック法律事務所に勤める三上早紀先生。彼女は幼い頃から漠然と思い描いていた ”世界中で苦しんでいる人たちに向き合いたい” という直向きな思いを胸に、一人でも多くの人々の力になるべく、今日も都内を駆け巡る。そんな充実した日々を送る彼女が、”後輩のためなら”という一心でインタビューに応じてくれた。

今回は、弁護士法人東京パブリック法律事務所に勤める三上先生の弁護士を志す理由から、今後のキャリアプランまで、お話を伺った。

三上 早紀 さん
・2007年3月 山梨学院大学附属高等学校卒業
・2011年3月 中央大学法学部政治学科卒業
・2014年3月 中央大学法科大学院卒業(未修)
・2015年   司法修習修了/弁護士登録、弁護士法人東京パブリック法律事務所入所


弁護士法人東京パブリック法律事務所

弁護士法人東京パブリック法律事務所は、2002年6月、都市の中の「市民の法的駆け込み寺」をめざし、東京・池袋の地に開設された都市型公設法律事務所。司法という権利実現・人権救済の場にたどり着けない市民の方々、例えば生活に困っている方、子ども、お年寄りや障害を持っている方、外国籍の方、中小零細企業経営者の方などに寄り添い、必要ならばこちらから駆けつけて(アウトリーチ)、適切な法的サービスを提供することにより、彼らの権利を実現し、人権を擁護する活動をしている。

 


”世界中の苦しんでいる人たちの力になりたい”そんな思いを抱えて大学進学


Q. どのような中高時代を過ごしていらっしゃいましたか?

中学生や高校生の頃から世界中の苦しんでいる人たちの力になりたいとの思いから、将来は国際協力の分野でキャリアを築きたいと漠然と考えていました。せっかく仕事をするなら、自分がお金を稼ぐためだけに仕事をするのでなく、だれか他の人の役に立ちたいと思っていたからです。

人の役に立つ方法として一番最初に思いついたのが、困っている人を助けること。当時の私が真っ先に思いついた困っている人は、発展途上国や紛争国において過酷な人権侵害に苦しむ人々だったんです。

その人たちの力になるために国際政治を学ぼうと考え、中央大学の法学部政治学科に進学しました。

“法律という専門知識を得て、世界中の人権問題にアプローチするということ”


Q. 大学時代はどのような活動をなさっていたのでしょうか

中央大学の法学部政治学科では、国際政治経済学のゼミに入りました。勉強は面白かったのですが、国家や地域共同体、国連を単位とした議論が多く、「私が個人レベルできることなどあるのだろうか」と将来の進路に思い悩むこともありました。

そんなときに、たまたま参加していた「グローバルフェスタ JAPAN」というイベントで、Human Rights Now(以下、「HRN」)というNGOを知り、そこでインターンをすることになりました。HRNは、伊藤和子弁護士が中心となって、日本から国境を越えて世界中で人権侵害に苦しんでいる人たちを救うことを目的に設立されたNGOです。

事務局長の伊藤弁護士はじめ、会員の多くが弁護士だったこともあり、法律という専門分野を生かして世界の貧困問題や人権問題に立ち向かう弁護士と多く出会うことになりました。HRNの活動に携わる弁護士たちとの出会いを通じて、「どんなに熱い情熱を持っていても何の知識も専門性も持たない人間が出来ることなどたかが知れている。

逆にいえば、特定の知識や専門性を身につければ、それを武器にして行動するチャンスが広がっていくのでは」と考えるようになりました。その思いをより強くしたのがベトナムでのインターンシップ経験でした。

“ベトナムでの法整備支援インターンシップを経て、法律家だからできることを実感”


大学4年生の時に、ベトナム・ハノイにあるJICAの法・司法制度改革支援プロジェクト事務所でのインターンシップに参加しました。この事務所には日本から法曹三者が長期専門家として1名ずつ派遣されていて、ベトナム政府に対する日本法の紹介セミナー、ワークショップ等の活動を行っていました。

インターン期間中は、長期専門家の先生方からレクチャーを受けたり、日本の行政事件訴訟法をベトナム側に紹介するセミナーやベトナム民法の改正に関するワークショップなどを見学させていただきました。

このインターンを通じて、法整備支援という形で、法律という道具を使って、ひとつの国とそこに暮らす人々の権利擁護を図る方法があることを再確認しました。世界中の人権問題に対して、法律という観点からアプローチしたいという気持ちが強くなり、学部卒業後、中央大学ロースクールへ進学しました。

“公設法律事務所である東京パブリック法律事務所との出会い”


Q. 司法試験合格後は、どのような就職活動をなさっていたのでしょうか。

ロースクールは未修コースでしたが、自主ゼミメンバーに恵まれたこともあり、初回の受験で何とか合格することができました。

就職活動では、公設事務所を中心にいくつかの事務所を受験しました。公設事務所とは、様々な公益活動を行うことを目的として設立された法律事務所で、リーガルアクセスの改善、弁護士過疎地域の解消等を目指した活動を行っています。

公設事務所への就職を希望したのは、採算性の低い事案であれ、依頼者が一見さんであれ、本当に困っている人であれば誰にでも積極的に手をさしのべる姿勢に感銘を受けたからです。

日本全国には複数の公設事務所がありますが、その中でも東パブが掲げる「市民の法的駆け込み寺」という理念に共感し、東パブへの入所を希望しました。所属する弁護士が20名を超えており様々な弁護士の仕事のスタイルを見ることができるであろうこと、また外国人の方々に対する司法アクセスの障害を解消するための外国人・国際部門を持っていることにも興味を惹かれました。

Q. 改めて、東京パブリック法律事務所とはどのような法律事務所ですか?

東パブは、2002年に東京弁護士会の全面的バックアップによって池袋に開設された都市型公設法律事務所です。

「市民の法的駆け込み寺」という理念のもと、法的問題を抱えているのに弁護士につながらない方―例えば生活保護を受給している方、子どもやお年寄り、障碍を持っている方、外国籍の方など―の力になるべく、区役所、福祉事務所、地域包括支援センター、社会福祉協議会、各種福祉関係事業者といった福祉関係機関との連携を強化しています。

本人は自分の抱えている問題が法的課題であると気がついていない場合であっても、支援者である福祉関係機関の方々が気付いてくれることもあります。福祉関係機関の方々との連携を通じて、こうした法的課題の掘り起こしを図り、適切なリーガルサービスが地域の隅々にまで行き渡るよう日々努力しています。

Q. 東京パブリック法律事務所の採用フローについて教えてください

東京パブリック法律事務所では毎年2名程度の新人採用を行っています。9月の司法試験合格発表後から司法修習が始まる頃の時期に、複数回の事務所説明会を開催しています。

年によって多少の前後はありますが、選考は、書類審査(12月)→1次面接(1月中旬)→2次面接(1月下旬)というスケジュールで進みます。

弁護士も対人支援職である以上、選考においては、法的スキルに加えて、コミュニケーションスキルがあることが重視されていると感じます。

“働き初めて改めて気づく、依頼者に寄り添う大切さ”


Q. 東京パブリックにはどのような依頼が来ることが多いのでしょうか?

東京パブリック法律事務所には、経済的に困窮している方からの依頼が数多く舞い込みます。

一番多い案件は、自己破産を主とする債務整理です。依頼者の方々が多重債務を抱えるに至った理由は様々です。突然病気になって働けなくなった方、ギャンブルで使い込んでしまった方…。金銭的のみならず、精神的にも追い詰められた方が多くいらっしゃいます。やっとの思いで弁護士に繋がった方々に安心してもらえるよう、迅速かつ丁寧に対応することを心掛けています。

1つの案件にかける期間はまちまちですが、自己破産の場合でスムーズにいったときは約4~5か月ほどで終わることが多いです。所内の弁護士は、それぞれが常時20件前後、多い弁護士で40件前後の債務整理案件を担当しています。

Q. 依頼者の精神的なサポートのために心がけていることはありますか?

依頼者には色々な方がいらっしゃいますし、対応に苦慮する場面も少なくありません。

精神的に追い込まれて感情的になってしまわれる方、自分の言いたいことを整理して話すのが苦手な方…。どのような方に対しても、「相手のペースに合わせて、真摯に相手の話に耳を傾ける」ということを心がけています。

例えば、自己破産の依頼者の方で、打合せの席で不安げに何か言い出したそうな顔をされる方がいらっしゃいました。よくよく話を聞いてみると、「自己破産をすることで海外旅行ができなくなるのではないか、戸籍に載って結婚できなくなってしまうのではないかが心配だ」とのこと。もちろん、そういったことは一切ありません。

ただ、弁護士が当たり前だと思っていることも、おそらく人生で最初で最後の自己破産をすることになった依頼者の方にとっては当たり前ではありません。

依頼者の方に寄り添い、安心していただくためにも、常に依頼者の様子を観察し、その方のペースに合わせて話を進めることで、何でも話しやすい環境を作ることを心がけています。

Q. 他に、お客さんとのコミュニケーションで気をつけていることはありますか?

矛盾しているように聞こえてしまうかもしれませんが、依頼者の方に寄り添うことは意識しつつも、感情移入をしすぎないように心がけています。

司法修習生だった頃から「過度に感情移入をして、あたかも当事者のような振舞いをする弁護士にはなるな」と繰り返し言われてきました。一歩引いた視点から客観的に事案に向き合うからこそ、依頼者の方のお役に立てるのだと思います。

弁護士が感情移入して依頼者と同じ目線で一緒に悩んでしまうと、悩んでいる人が2人に増えただけで、結局、問題の解決にはなりませんよね。

“世界中の苦しんでいる人たちの力になるために、今後も走り続ける”


Q. 三上先生の今後のキャリアプランについて教えてください。

来年からは法テラスのスタッフ弁護士として、司法過疎地である島根県浜田市で働くことが決まっています。東パブでの学びを糧に、浜田市の皆様のお役に立てるよう精力的に活動していきたいと思います。

もちろん、今でも、世界中の苦しんでいる人たちの力になりたいという思いは持ち続けています。具体的には、いつか法整備支援の分野に法律の専門家として関われたら良いなと思っています。

そのためにも、まずは早く一人前の弁護士になることが必要ですね。法律家としても、人間としても成長し続けられるよう、今後もより一層研鑽に努めたいと思います。

◇◇◇

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